いよいよ朝晩の気温も下がってきて空気も少しずつ乾燥してくる季節になりましたね。
今回は乾燥肌と脂性肌のメンテナンスのやり方について使う石鹸のpHに焦点を当てて考えてみましょう。
もくじ
肌のpH
ヒトの皮膚は酸性かアルカリ性かと言われれば「弱酸性」と誰でも即答できるくらいCM等でも謳われていますよね。
それでは、弱酸性というのはどのくらいのpHなのでしょうか?
身近な液体のpH pH 液体 酸性・アルカリ性の強さ 酸または塩基 0未満 鉛蓄電池の電解液 とても強い酸性 H2SO4 0 10%硫酸(日本薬局方 希硫酸) とても強い酸性 H2SO4 1 胃液 とても強い酸性 HCl 2 レモンの果汁 強い酸性 クエン酸 3 酢 やや強い酸性 酢酸 4 ミョウバン水 やや弱い酸性 [Al(H2O)6]3+[注釈 1] 5 コーヒーのブラック(砂糖、ミルク抜き) 弱い酸性 数種のカルボン酸 6 雨水 わずかに酸性 CO2 7 純水 中性 8 海水 わずかにアルカリ性 CO2, HCO3− 9 ホウ砂水 弱いアルカリ性 ホウ砂 10 石鹸水 やや弱いアルカリ性 脂肪酸Na, 脂肪酸K 11 アンモニア水 やや強いアルカリ性 NH3 12 石灰水 強いアルカリ性 Ca(OH)2 13 家庭用塩素系漂白剤、カビ取り剤 とても強いアルカリ性 NaOH 14 4%水酸化ナトリウム水溶液 とても強いアルカリ性 NaOH 14以上 アルカリ乾電池の電解液 とても強いアルカリ性 KOH Wikipediaより引用
一般的には肌のpHは4.5~6くらいが普通とされていて、その中でも乾燥肌の人は中性に近く脂性肌の人は酸性寄りだと言われています。
アルカリ性の石鹸が一般的な理由
一般的な石鹸ってどのくらいのpHなのか?
上の表の中にも石鹸は10pHと記載されていますが、市販されている石鹸の殆どは大体pH値が9~11程度の物が多くなります。
あれ?なんで肌には弱酸性が良いって言われているのにアルカリ性なの?って思いますよね。
肌のpHは弱酸性なのにアルカリ性の石鹸が一般的な理由ですが、これは洗浄力の高さに由来しています。
アルカリ性のメリットとして、汚れ(皮脂、タンパク汚れ)落ちが良いという点があります。
特に、タンパク汚れ(食べこぼし、血液等)のアミノ酸の結合を断ち切って汚れを落とす効果は高くて生肉業や鮮魚関連の掃除では業務用の漂白剤などでは強アルカリの物が使われています。
それくらい汚れ落ちが良いという事ですね。
因みに、温泉にも弱アルカリ性の性質が多くて表皮の汚れや古い角質を溶かして落とす効果がある事から泉質が少しヌルヌルした様に感じる温泉が多いというのもあります。
日本は他の国からすると割と珍しく弱酸性の温泉も複数あります。肌に優しい泉質が気になる人や湯治等で利用する人は参考にしてみるのも良いかもしれませんね。
弱酸性の石鹸が良いと言われる理由と一般的では無い理由
上記のアルカリ性の石鹸のメリットとは逆にアルカリ性の石鹸のデメリットは、皮脂を洗い落とす事から一次的に表皮がアルカリ寄りになり皮脂膜の形成が遅れて乾燥肌になってしまうという事もあり、元の弱酸性の状態に戻るまでには大体3時間くらいかかるとも言われています。
それに比べると弱酸性の石鹸は元の肌のpHに近いので刺激が少なくて使用後の肌のツッパリ感も少ない事、細菌の繁殖を防いだり殺菌効果がある事からスキンケアには向いているという事になります。
しかし、弱酸性の石鹸には皮脂を落としたりタンパク汚れを落とす効果がアルカリ性の石鹸に比べると著しく弱い為に洗浄という視点ではあまり重宝されていません。
特に皮脂の溜まりやすい頭皮や関節部分では洗い足りない感覚があり結果的に何度も洗浄してしまったり、強く擦って洗ってしまったりしてしまう事から逆効果になる場合もあります。
界面活性剤不使用の石鹸
石鹸の話題となると気になる事の一つに界面活性剤の事もあると思います。
今はドラッグストアやディスカウントストアでも界面活性剤不使用と記載されているボディソープをよく見かける様になりました。
界面活性剤というのは界面(水と油の境目や、肌と水の境目等)のバランスを変える薬剤の事ですが、この界面活性剤が肌に残り皮脂膜を形成する邪魔をしていて肌に悪いと言われる事から「無添加」「界面活性剤不使用」と表記された石鹸が増えてきています。
界面活性剤が使われる事が多い理由は大きく二つあります。
- 泡立ちが良い
- 皮脂汚れを溶かして洗浄力を上げる効果
界面活性剤は水と油の境目のバランスを変える事で水の中に脂が溶けやすくなります。目視できる状態で分かりやすい例えをするとマヨネーズです。マヨネーズは油分と水分が溶け合って乳化状態となってあの滑らかなマヨネーズになります。
マヨネーズに関しては油分の割合が多くてあの質感ですが、石鹸を使う時は水を多く使って洗浄する事から油分よりも水に近い状態になって油汚れがサラサラと落ちていく状態になります。
洗浄力は高いですが、使用法を間違えると肌に残る成分によってカサカサした状態が長くなり乾燥肌の原因にもなるのが難点です。
石鹸の使い方
ここまでの内容で石鹸とpHの事と界面活性剤の事について触れてきましたが、実際に肌の状態や体質で合う合わないって事がありますので、以前僕は普通に牛乳石鹸を使っているという記事を書いた事もありますが、どの石鹸が絶対に良いとは書かない事にします。
どんな石鹸にしても使い方を間違えると汚れ落ちも悪くなりますし表皮に石鹸や界面活性剤が残ってしまって、あまり肌に良いとは言えない状態になってしまうので、基本的な事ですが書いておきます。
必ずしっかりと泡立てる事
ボディソープにしても石鹸にしても、必ずしっかりと泡立ててから使用してください。
泡立てて使わなかった場合、体表面に洗剤の成分や界面活性剤が残ってしまい皮脂膜の生成が遅れてしまいます。
強く擦らない事
しっかりと泡立てて体表面や洗顔時の顔に広げます。この時に強く擦らない様にします。表皮は物凄く薄い上に洗浄する際は水分でふやけて柔らかくなっています。この状態で強く擦ってしまうと小さな傷を沢山つけてしまいますので濡れている状態では気にならなくても乾燥すると肌が突っ張ってきて痒みを引き起こしたり薄皮が剥けてしまう事があります。
使用後は念入りに洗い流す事
当然ですが、石鹸の成分が残った状態では肌がなかなか皮脂膜を作れません。時間をかければ生分解していきますが肌のバリア機能を早く戻す意味でもしっかりと洗い流す様にしてください。
まとめ、乾燥肌と脂性肌のケア
季節の変わり目は湿度も気温も変化が激しくて肌のケアにも敏感になってしまいますね。
肌の状態には個人差があり、体質的に合う合わないというのがあります。
肌が乾燥しやすい人は表皮が中性に近くなっている事が多いので弱酸性の石鹸は効果が見込めると思いますが、仕事や学校で汗をかいたり油汚れが付着した状態だとブドウ球菌をはじめとした細菌に感染してしまう確率も上がります。洗浄はしっかりと行って入浴後のケアを念入りにする必要がありますが、その際の化粧水や乳液等も吟味して選ぶのが良いでしょう。
脂性肌の人は、表皮に皮脂膜が分厚く乗っている状態です。保護機能としては高いのですが酸化して乾燥してくると表皮を刺激してしまい痒みを引き起こす原意になったり体臭の原因にもなります。しっかりと洗浄する事は勿論ですが、食事でも脂質のコントロールをする必要があります。
今回の記事は、あくまで一般論的な内容ではありますが、乾燥肌、脂性肌のケアで痒みや細菌の感染等を防ぎやすくなるのも事実です。
肌の状態によってケアのやり方を考えてみる柔軟な考え方も良いかもしれません。